(10/7/9)
リート市場に新規上場の芽
=開花はもう少し先?〔証券情報〕=
 不動産投資信託(リート)市場では、新規上場の芽が出始めている。2007年10月の産業ファンド投資法人<3249>以来途絶えていたリート上場だが、東急不動産<8815>グループの運用子会社TLCリアルティマネジメントが、賃貸住宅を投資対象とする投資法人の設立を発表。今後、上場を目指して規模拡大を図るとするなど、市場参入に興味を持つ企業が複数あるようだ。

 TLCが設立した「コンフォリア・レジデンシャル投資法人」は、需要増が見込まれる東京圏の単身・小家族向けマンションやシニア向け住宅などに重点投資する。当初の資産規模は300億〜400億円、上場時には500億〜1000億円程度まで拡大したい考えで、東急リバブルなどグループ企業とも連携しながら優良物件を取得していく方針だ。東急不動産グループは、すでにオフィス・商業施設を運用対象とする東急リアル・エステート投資法人<8957>のスポンサーになっているが、「物件の属性が違うため競合することはなく、相互補完的な効果が期待できる」(東急不動産)という。

 もっとも、住宅系リートに関心を持つのは東急不動産グループばかりではない。大量の退室が出にくい住宅系は収益が安定している上、中古マンションは利回りが乗るため、国債とのスプレッドにらみで銘柄選定を行う地銀などにはうってつけの投資対象。不動産会社にとっては、新築賃貸マンションの出口戦略として活用できる。スポンサーが経営破綻した日本レジデンシャル投資法人は結果的に伊藤忠<8001>系リートのアドバンス・レジデンス投資法人<3269>と合併したが、新スポンサー選定に当たっては、伊藤忠と並んで三菱地所<8802>などの名前が挙がっていた。空室率の高止まり、賃料の下落基調とまったくいいところのないオフィス市場に対し、住宅市場では、首都圏マンション発売が5月末時点で4カ月連続の前年同月比プラス。年明け以降の契約率は好不調の境目とされる70%を超えるなど改善が顕著だ。このため、「住宅系リートを持っていないデベロッパーは、参入の機会を伺っている」(準大手証券)という。

 住宅系以外では、大和ハウス工業<1925>が手掛ける商業・物流施設を投資対象とするリートの上場観測が出ている。同社は2008年6月、商業・物流系の「大和ハウスリート投資法人」を東証に上場する予定だったが、市場環境の悪化を理由に取りやめた経緯がある。大和ハウス自体の経営は安定している上、経営破綻したモリモトからビ・ライフ投資法人<8984>と運用会社を譲り受け、ビ・ライフをリートで初めて民事再生法の適用を申請したニューシティ・レジデンス投資法人と合併させるなどリート事業に対する積極的な姿勢が目立っており、市場関係者からは「上場するとすれば、一番早いのではないか」とみられている。

 しかし、住宅系に明るい兆しが出てきたとはいえ、不動産市場全体への波及は見られず、新規上場の環境が整ったとは言い切れない。リート市場自体もオフィス系の不調などを背景に依然として低迷を余儀なくされ、東証が上場リートの時価総額を基に算出している「東証REIT指数」が900前後と指数算出開始時の基準値1000を下回るレベルで推移している。景気回復は緩やかなスピードにとどまっている上、世界経済をけん引する米国や中国の減速懸念が強まるなど先行きは不透明だ。さらに、地銀のような安定志向の投資家の中には、株式相場の動向に左右されない非上場リートを選好する向きもあるという。公募増資や法人債の発行が復活するなどリート市場は最悪期を脱した格好だが、あくまでも「リハビリ期間中」(国内不動産運用会社)であり、新規上場の芽が花を咲かせるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。(了)

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