(09/05/26)
外為証拠金取引のレバレッジ規制に賛否両論
=投資家は反対〔FX情報〕=
 金融庁が進めている外国為替証拠金取引(FX)業者に対する一連の規制強化策のうち、業界関係者が最も高い関心を寄せていたレバレッジ(取引倍率)規制の概要がようやく明らかになってきた。当局はこのほど、主要なFX業者13社に対し、レバレッジを25倍に規制する案を提示した。実現すればほとんどの業者が現行倍率からの引き下げを迫られることになり、業界内に波紋が広がっている。

 「高いレバレッジは投機を助長し、為替相場の急変が起きた際に、自動的なロスカット(損失確定)が十分機能しないまま、FX業者、個人投資家の双方が予期せぬ損害を被るおそれがあるので、歯止めが必要」―。規制の趣旨を要約するとこうなる。

 あるFX業者は「確かに業界のレバレッジ競争は400倍を提示する業者も現れるなど、行き過ぎた部分があった」と語る。400倍の取引というのは、ドル円取引ならば25銭動くだけで資金がゼロか、2倍になるという高リスク・高リターン取引だ。当局の背景に、金融危機後の世界的なレバレッジ規制の風潮を見る業界関係者もいる。

 10年前に国内でひまわり証券(当時ダイワフューチャーズ)がサービスを開始した時、FXのレバレッジは14倍だった。しかしその後、業者間のサービス競争の一環で倍率は年々引き上げられ、現在、100倍コースを用意していない業者を探すのは難しい。ちなみに株の信用取引のレバレッジは約3倍。リスクが高いと言われる商品先物取引でも、おおよそ25倍程度。FXのレバレッジの異常な突出ぶりが分かる。

 高レバレッジが浸透した背景には、投資家側の事情も絡んでいる。長期間続いた円安基調が終了した上に、金融危機で主要通貨の政策金利が低下、FX投資家の間で主流だったスワップ(通貨間の金利差)を狙って高金利通貨を長期保有するという、「外貨預金代わり」の投資スタイルは過去1年間で崩壊した。長期運用派のFX投資家の大半は、大損を抱えたままの塩漬けか、損失計上に追い込まれている。

 株安も重なり、個人投資家にとっては少額の証拠金で機動的に取引できる高レバレッジFXは、資産の分散運用先の一つとして魅力的な存在と映った。取引所FX取引の「くりっく365」を手掛ける東京金融取引所の斎藤次郎社長も「レバレッジが100倍以上のOTC(店頭取引)業者が急速に伸びたのは、それが投資家のニーズに合っていたからだ」と指摘する。金融サービス業のGCIキャピタルが4月にインターネット上で行ったFX投資家の意識調査でも、対象となった411人のうち約85%がレバレッジ規制に反対と回答した。

 FX業界では、レバレッジ規制の効果に疑問を投げ掛ける声も強い。日本にFXを紹介したFXCMジャパンの尾関高取締役は「倍率規制はインフルエンザに解熱剤を処方するようなもの。むしろ、損失拡大を防ぐための取引システムの信頼性向上などが重要だ」と話す。また、伊藤忠商事系のFXプライムは「損失確定が早い高レバレッジ取引よりもむしろ、低レバレッジ投資家の方が損切りが遅れて損失が拡大する傾向がある」(三浦俊一社長)と指摘する。

 半面、FX取引に詳しいT&Cフィナンシャルリサーチの吉田恒社長は「高レバレッジ戦略が成立するのは、外為市場のボラティリティー(変動率)が低いことが前提だ。ボラティリティーが上昇している現在では、プロでも高いレバレッジで勝ち続けるのは難しい」と語る。FX業者の中からも「結果的に低いレバレッジで取引する方が投資家は生き残っている」(都内の中堅業者)との声が聞かれる。

 こうした声をどう判断するかは金融庁次第。ただ、「25倍に規制されれば、FX業界は淘汰(とうた)縮小を余儀なくされ、投資家の意欲が後退する。『貯蓄から投資へ』という大局的な流れに逆行する」(他のFX業者)ことにもなりかねない。(了)

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