(07/12/11)
有価証券の開示について
=投信評論家・寺田幸弘氏=
 8月の配信で米国の住宅ローンが問題になっていると一言触れた。あまりの高まりの故に、9月の配信では忌憚(きたん)のない意見を述べさせていただいた。ところが、このサブプライム住宅ローン問題は収まりをみせるどころか、その波は世界を巻き込んで収拾の見通しが見えてこない。

 マスコミは毎日、この問題について報じている。豚肉ならまだしも、くずを混ぜて牛肉の挽肉であるとした食肉加工会社にも似て、この証券化商品はライト・オフ、すなわち帳消しにするしかないのではありますまいか。それにつけても思い出されるのが、2001年11月の米エンロン粉飾事件である。いわゆるSPC(特別目的会社)を会計処理から外して、実体を隠した一件である。このエンロンの債券を組み入れていた日興のマネーマネジメントファンド(MMF)が大きな打撃を被り、それがためにファンドの解散に追い込まれた。その日興をTOB(株式公開買い付け)で傘下に収めたシティグループは、このサブプライムで最高責任者が職を辞し、再びアラブのオイルマネーで虎口を脱した。因縁めいたものを感じざるを得ない。

 証券会社や金融機関、保険会社や財団、基金、年金などの巨大組織が痛手を受けただけならまだよいが、もし再び米国のMMFや日本のMMFがサブプライム関連を組み入れていたら問題である。日本の個人投資家はそのどちらも保有しているからである。米のMMFが1991年に元本危機に陥ったときは証券取引委員会の了承で救われたが、1994年には元本割れに見舞われた。そのため1996年、‘40年投信法規則17a−9を定めて、スポンサーによる不良債権のMMFからの買い取りの道を開いた。すでにこの手段をもって資金注入がなされたと報ぜられている。日本のMMFは、大手運用会社は組み入れていないと語っていると報ぜられていて、ひと安心である。MMFにはコマーシャルペーパー(CP)の組入比率が5割以上と高く、その銘柄名を調べたが、正直なところ筆者も組み入れCPの発行体を即座には判断しかねる名前が並んでいる。CP、証券化商品、デリバティブ取引はその内実がブラックボックとして隠ぺいされている場合が多いと思うが故に、二つの提案をしたい。一つは証券化商品、デリバティブに開示の義務を課すこと(内外ともに情報開示規制は適用されていない)、二つ目は個人投資家の資金を運用する投資信託は、この種の金融商品は組み入れてはならないことにすることである。

 もう一つ、開示の話題について触れておきたい。公募投信の情報開示は日米ともこの10年で2回の改訂がなされた。

 米国では1998年施行の届出書の大改編(届出書の前段部分が目論見書となる)と目論見書を平易にしたファンドプロファィルという様式を別途導入した。そして先月、新たな提案がなされ、来年前半に正式なものとなろう。今回は届出書の冒頭に、ファンドプロファイルの精神を帯した要約(サマリー)を置き、投資家は要約を印刷物(サマリープロスペクタスと呼ぶ)として受け取り、要約を含む目論見書本体はインターネットで閲覧する。これで目論見書の投資家への交付義務(‘33年法 5(b)(2))は充足されることになる。印刷した目論見書を希望すれば、その通りにもなる。近年の技術の進歩をとり入れ、開示書類を一本化するというものである。なお、ファンドプロファイルという言葉は、サマリープロスペクタスと改められた(‘33法規則498)。

 一方、日本では同じ1998年に投信法に基づく受益証券説明書を、証券取引法に基づく届出書(その前段部分が目論見書となる)へと大転換した。準備書類は大幅に重くなった。2004年6月の証取法の改正で届出書を改編し、目論見書となる部分を改編した。極めて簡便すぎた受益証券説明書から厚い目論見書を経て、ページ数においてその中間の2種の目論見書へと改訂した。一つは、投資家に必ず交付しなければならないという意味で「交付目論見書」と呼び、届出書の中で交付目論見書に記載されなかった残りの大部分は、投資家が請求した場合は提供しなければならない別の目論見書、すなわち「請求目論見書」と呼ばれる。

 米国の要約(サマリー)目論見書のプロトタイプと日本の交付目論見書とを比較すれば、米要約目論見書が簡便となる。ワンステップ、米国の後ろを歩む日本の金融行政は、いずれ「簡潔な交付目論見書」を提案することになるのであろう。(以上は筆者の個人的な見解です)(了)

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