(07/04/11)
買収ファンド、三角合併の脅威
=投信評論家・寺田幸弘氏=
筆者は1月のこの欄で、ファンドという活字が増えた気がすると書いた。このところ、洪水とまでは言わないが、ファンドとりわけ買収ファンドという活字が連日のごとく踊っている。明星食品やサッポロビールを巡る買収ファンドの動きが、本格化の前触れと懸念されるからであろう。買収ファンドの資金量が拡大するとともに、世界のM&A(企業の合併・買収)が大型化している。グローバル化の時代であると単純に受け入れてばかりはいられない。

ファンドが事業体でなく、あくまでもファンドである点がまず指摘されなければならない。切り売りか、転売以外に何があるだろうか。TOB(株式公開買い付け)によって、価格を引き上げて、多数を制したファンドがその権利を執行することを禁ずることは出来ない。しかし、買収された企業は、その地域に所属し雇用を維持し、その社会で一定の機能を果たしている。その秩序が解体されるとすれば社会的な不安定を醸成する。ある意味で自己完結的に営なまれて来た日本という社会にとっては、国境を外国と接し、住民が移動しながら形成されて来た諸外国と比べ、簡単には受け入れ難いものがあっても、決して不合理であるとは言えまい。

こうした買収ファンドが企業の大株主である経営者と協力して、上場企業を非上場企業にする行動が見られた。これをMBO(経営者によるその所属企業の買収)と呼んでいるようだが、正しい意味でのMBOは、経営陣の一部が事業の一部を分離、独立することで、現経営陣がそのまま残って買収ファンドの資金を頼りに非上場化することではない。企業の活性化でもなく、非上場化を望まぬ一部株主への背信ですらある。レックスHDの一連の手続きは会社法の新しい規定を利用して、普通株を全部取得条項付株式に変更して、これを取得執行し、交換に再び新普通株を、それ1株に対し0.00004547株交付するというものである。この企業の再上場という事案が生起した場合、上場審査はどう行われるのであろうか興味がある。上場に際しての創業者利益と引き換えに、その企業の支配を創業者は新たな株主に委ねるべきである。資金調達を市場にあおぐのであるから当然の帰結である。

買収ファンドでも、破綻しかかった企業を引き受けるハゲタカファンドならむしろ歓迎されよう。未上場企業(を支援する)ファンドも、社会的役割が認められる、しかし、元気で活躍している企業の買収ファンドには節度が求められる。買収対象になる可能性のある企業に投資することを運用方針とするようなスペシャルシチュエイションファンドなどが生れる可能性もある。そんなハイエナ(の様な)ファンドはご免被りたい。

最後に、いよいよ三角合併の解禁が直近に迫って来た。三角合併に伴う株式交換に際して、株主に発生する株式譲渡益について、その繰り延べが認められるよう関連省令案(財務省)が準備中と報ぜられている。三角合併は外国企業が、日本法人として子会社を設立し、対象となる日本企業と当該子会社を合併させるわけであるが、その際当該外国親会社は適切な情報開示を求められることにするようでもある。これも省令(法務省)での対応となる。

産業界には外資による三角合併への懸念が高まっているが、ここでは外国企業と対象日本企業の間の事業の関連性が前提である。日本の産業界にとって問題が生ずるとすれば、それは有能な企業ほど狙われやすいということではないだろうか。そして合併をスムーズにするために、TOBを併用するという恐れである。5月以降、注意して見守らねばならない。(了)

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