政治家や厚労省の役人が「公的年金は健全だ、安心だ」と言い張っても、国民は納得しない。それどころか「公的年金は不安定だ、本当に年金はもらえるのか?」と疑っている。なぜ、こうも言い分が違うのだろう。
「同じ公的年金という言葉でも、見ている部分が違うのだから話しがかみ合わないのは当たり前のこと」。年金の達人が、さらりと解説してくれた。
政治家や役人が健全だと言っているのは「年金財政」だ。2004年の年金改革でマクロ経済スライドを導入したことで、保険料を負担する若い世代が減少すれば、それに応じて高齢者に支払う年金額を減額するようにした。負担と給付のバランスが保たれるので、公的年金は破綻しないという。確かに、それは当たっている。
ところが国民が見ているのは「個人ごとの受給額」だ。たとえ年金財政が破綻しなくても、生活できないような低水準の年金額なら、国民の生活が破綻してしまう。将来の人口構成によって、受け取る金額が変わってしまうのだから、公的年金は「不安定だ」と感じる。政府は、専業主婦の夫婦世帯をモデルとして退職前所得の5割を確保すると言うが、退職前所得の定義もあいまいだ。厚労省は、少子化が改善しない場合、4割台に低下するシナリオも示している。
経済協力開発機構(OECD)は、各国の公的年金の所得代替率を単身男子で比較している。それによると、日本は04年の年金改革により、代替率が50.3%から34.4%に低下、加盟30カ国中28位と最下位グループに転落すると予想している。調査を担当したモニカ・クエイサー氏は「日本は、退職後の貧困リスクを警戒すべきだ。若いうちから貯蓄を始めることが大切だ」と強調する。
さまざまな情報が交錯する中で、国民は何を信じていいか分からず、不安をつのらせる。今は、公的年金にとって最悪の状況だろう。
では、どうしたらいいか。先ほどの達人は「公的年金だけで議論するから、展望が開けない」と指摘する。「公的年金ができる範囲を示し、企業年金と自分の蓄えを加えた3本の柱を組み合わせて、老後の所得保障プランを各人が作り上げる仕組みを作ればいい。その上で、国は税制などでその仕組みをサポートすれば、老後を不安に思う人は減るだろう」と予想する。幽霊は、正体が分かれば怖くない。年金も、現実を見据えた個人ごとの将来像を描ければ、あとは各自が対策を打つだけの話である。
この達人は確定拠出年金(日本版401k)が大好きだ。「国民全員が401kに加入できるようになれば、職場や学校で導入時教育が活発になる。そこで、結婚から子育て、老後までの資金計画を立て、資産作りの第一歩を踏み出す。年金不信を解消するのに最適な制度だ」と力説するのだが、それは少々、我田引水だろうか・・・。